長短金利は共にゼロでなければならない理由はない
日銀はYCC修正の効果見極め、3月会合で現行緩和継続-関係者
日本銀行は黒田東彦総裁ら現在の正副総裁にとって最後の参加となる9、10日の金融政策決定会合で、昨年12月の政策修正の効果を見極めるために、再修正は行わない可能性が高い。現在の金融緩和策を維持し、企業の賃上げサポートを継続する。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、長期金利は上限の0.5%にほぼ張り付き、イールドカーブにもゆがみが残っているが、日銀は引き続き見極めていく段階にあると判断している。10日までに得られるデータや情報を評価した上で、最終的な政策決定を行うという。
日銀は昨年12月の会合で、市場機能の改善を狙いにイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策を修正し、長期金利の許容変動幅をゼロ%を中心に上下0.25%から0.5%程度に拡大した。1月の会合ではYCCと整合的なイールドカーブの形成を促すため、共通担保資金供給オペも拡充した。
こうした一連の措置にもかかわらず、日銀が1日に公表した債券市場サーベイでは、機能度判断DIがマイナス64と過去最低を更新するなど、昨年12月の緩和修正後も目立った市場機能の改善はみられていない。
高田創審議委員は2日の横浜市での会見で、市場機能に関し、これまで実施してきた措置に伴う改善を見極める段階にあるとし、今の段階ですぐの追加的な対応は念頭に置いていないと語った。
市場機能改善を見極め、直ちの追加対応念頭にない-高田日銀委員
ブルームバーグが2月14、15日に実施したエコノミスト調査では、今回の会合についてほぼ全員が現状維持を予想した。3月の決算期末を控えて市場に不測の混乱を生じさせ、企業の賃上げ機運に水を差さないように、サプライズ的な政策修正は行わないと見られている。市場の一部には新体制の政策の自由度を確保するため、一段のYCC修正などを行うとの見方もあった。
政府が次期総裁候補に指名した経済学者の植田和男元審議委員は2月下旬の国会での所信聴取で、YCCの副作用に言及しながらも、現在の日銀の金融緩和は適切との見解を示した。YCCの取り扱いについては、市場の状況や他の政策委員の意見などを踏まえて「時間をかけて議論を重ね、望ましい姿を決めていきたい」と語った。
2013年3月に就任し、在任期間が歴代最長の黒田総裁は4月8日に任期満了を迎える。雨宮正佳、若田部昌澄の両副総裁は3月19日で任期を終え、内田真一理事と氷見野良三前金融庁長官が後任に指名された。
植田新総裁は慎重派なので、すぐにはYCCの廃止に向かうことはないが、心の中では当然YCCが経済回復に与えている影響など無視できるレベルだと考えているはずです。
一般的には増税緊縮論者もマネタリストも積極財政論者も金融緩和を求めるが、金融緩和を求める目的が違ってる。
積極財政論者は当然、経済回復のため、経済へのお金の供給を増やし、景況を押し上げて、デフレ状態から抜け出すために、財政出動だけでなく、金融緩和も求める。
増税緊縮論者にとっては、金融緩和さえしておけば、増税緊縮をしてもマイナス成長は回避でき、財政赤字削減に邁進できる。
マネタリストにとっては、金融緩和さえしておけば、緊縮財政でもいつかは経済回復できるという糞理論を証明することができる。
各々、目的も立場も違うが金融緩和を進めるほうが好ましいという方向性は同じに見える。しかし金融緩和と言っても、政策金利と長期金利では意味が違う。
政策金利は中央銀行が民間銀行に貸し付ける時の金利のことで、これが低いと民間企業の設備投資を促し、景況を改善させる効果を持つ。マイナスとして預金金利も下がるので、利子所得は低下するが、利子所得よりも景況の改善による生産の拡大による所得の増加のほうが重要なので、政策金利は景気が悪ければ引き下げるのがセオリーになる。
ところが問題は長期金利で、この長期金利は民間銀行が一年以上のお金を貸し付ける時の金利だが、その基準になっているのが、10年ものの国債の利回りで、住宅ローンの固定金利にも影響がある。
一見すれば長期金利も低ければ低いほうが良く思えるが、国債の利回りとは、ようするに政府が債権者に支払う金利なのだから、国債の利回り自体が低くても景気にあたえるプラスの効果は当然一切ない。
財務省の論理では、金利が上がると利払いだけで財政が圧迫されるから、長期金利は低くなくてはならないというものだが、国債残高1000兆円に金利が3%付くと、利払いだけで30兆円の支払いが必要になる。
100兆円弱の予算で30兆円も財政赤字が拡大すると、当然財政再建など到底不可能だという事がわかる。景気低迷下、デフレ下では本来は財政再建など不可能なはずだが、増税緊縮政策を続けられて来れたのもすべては長短金利の操作をして、国債の利払いを事実上、なくしてこれたからになる。
1999年2月12日に人類史上初のゼロ金利政策が日銀によって導入された。この時も、お金の貸し借りというのは金利があるのが当然で、金利のつかない金融などそもそも成り立っていないと言われてきた。
異常と言われようがデフレから脱却させるために、あくまで短期間だけ大規模な金融緩和を導入していく。当初のプランは当然そのようなものであったはずが、そこから24年も経過してもなお、デフレ脱却もできてなどいないし、金融の正常化も実現できていない。
YCCの廃止について反対する者が当然多いが、そのような人たちはたして運用利回りがほぼゼロな国債で自分の資産を運用しているか疑問視される。
メガ銀・農中、YCC撤廃なら国債投資再び 「1%で買い」
これまで国債への投資は金融機関は、利回りが低すぎて敬遠され、投資不適格の扱いになっていたが、YCC撤廃で利回りが上昇してこれば、再び投資先に資産を振り向けるとしている。
基本的な概念として、国債の人気が上がると利回りが低下し、国債の人気が下がると国債利回りが上昇する。途上国の利回りが高いのは、売れずに利回りが高くないと売れないからで、先進国のほうが当然利回りは低い。
米国債の利回りは4%前後あり、アメリカは最強国家であり、経済も防衛も最強であり、一番安全な米国債で利回りが4%あれば十分投資先にもなる。
しかし日本の国債利回りはほぼゼロであり、これは何も日本国債が人気ありすぎてゼロになっているのではなく、日銀が買いまくった事によって市中での売買が成立せず、金利がゼロになっているだけになる。
現金と同じく金利がゼロなのにその金融商品を買う理由もなく、日本国債は金融商品としては機能はしていない。
そもそもお金の貸し借りには金利が付くのが当然であって金利なしでお金を貸すのはリスクしかない。少なくとも国債の金利がゼロである事自体での景気浮揚効果などない。
ただ国債の利回りは銀行の長期金利にも影響し、住宅ローンの固定金利の基準にもなっている。住宅建設はGDPの3%程度を占めるが住宅産業は関連業界が多く、家が売れると同時に電化製品も売れるために住宅ローンの金利は低い方が家は売れる。
しかし住宅建設は右肩下がりであり、金利が低いことで新たな需要が生まれているというよりも、需要の減少をなだらかにしているだけで、住宅ローンの金利が低いことで、大きな経済回復効果は当然発生はしていない。
それよりも重要なのは設備投資や個人消費が回復するかであり、長期金利が低いからといって、特にプラスの効果はない。
そもそも財政出動は財政赤字を拡大させ、同時に民間需要を増やすという政策になる。国債の利回り上昇も財政赤字を拡大させ、民間の投資利益を増やし、なんらかの需要の拡大を発生させることになる。
短期金利は設備投資の減少のマイナスの影響が大きいので引き上げは困難ではあるが、長期金利は住宅建設などの特定業種に影響が限定されるので、引き上げた方が民間の利益は当然増える。
その分財政赤字は拡大はするが、そもそも景気回復には財政赤字の拡大が必要なのだから、その財政赤字の拡大が財政出動によるものか、それとも国債利回り上昇によるものかの違いでしかない。
当然として財政出動のほうが、きめ細やかな経済対策は打てるが、利回り上昇でも同じだけの金額のお金が民間に流れるのだから、本来的にはどちらでもいい。
緊縮増税論者や財務省にとっては利回りの上昇をなぜ嫌がっているのかと言えば、例えば国債残高1000兆円で3%の利回りになれば年間30兆円の財政赤字が拡大する。年100兆円の国家予算の国にとって年30兆円の財政赤字拡大は彼らの念願の財政再建は事実上不可能なレベルまで追い込まれることになる。
そもそもデフレ下、経済不況下で財政再建をすることは本来的には不可能なはずだが、それを可能なように錯覚させているのがYCCによって短期金利だけでなく、国債利回りをゼロまで下げてきたためにある。
これによって本来生じるはずの財政負担が表面上なくなっているように見えるために、表向きは後もう少し増税緊縮を進めれば財政均衡、財政再建が可能ではないかと期待を抱かせているのがYCCの最大の罪になる。
積極財政論者の求める財政と金融両面での役割は財政出動をし、需要を増やし経済を回復させるためであるが、逆に緊縮増税論者やマネタリストの求める金融緩和は、財政再建を進め金利負担、財政赤字を減らすための金融緩和であって、財政赤字の拡大を求める積極財政理論とは金融緩和の意味が根本的に違う。
積極財政論者の中でもYCC廃止に否定的で、財政も金融もアクセルを吹かせることが正論で金融引き締めなんて必要はないと言う正論を吐く者も多い。正論である以上、おかしなことは言ってはいないが、正論に自己満足して、経済回復させるという目的に何の効果も発生させていない。
財政も金融もアクセルが必要というのは正論であり、正論なのだから批判されることもなく、何のリスクもない。
しかし、岸田や財務省がこの正論に納得して緊縮増税政策をやめるかといえばその可能性はほぼゼロ%のままだ。岸田は聞く力を選挙の時にはアピールしていたが、結局は財務省の声は聞くが国民の声は聞きませんという政権であり、その結果もあって支持率も政権崩壊レベルにある。
岸田にいくら正論を吐いても岸田は聞く力などないのだから、ただ正論を吐いてるだけでは何の効果もない。こういう政権に唯一効く力が圧力、外圧であり、その圧力がかかっていないから岸田や財務省は緊縮増税路線を維持することができる。
その圧力のひとつとしてYCCの廃止がある。長期金利の上昇自体で経済回復に向かうわけではないが、これによって国債利回りが上昇して財政赤字が拡大すれば、財政再建、財政均衡は不可能という結論が出る。
このあとの選択肢は2つしかなく、ひとつは財政赤字穴埋めのためにさらなる緊縮増税を進めて経済崩壊に向かい、岸田政権と財務省の解体に圧力が向かう。その後の政権で経済再建を進めることになる。
もうひとつはデフレ下での財政再建は諦めて、経済再建に本腰を入れる。
YCCの廃止はこれだけの強力な圧力をかけることができる。これがただ正論を言って自己満足して終わっている者との違いになる。
YCCの廃止は当然リスクの伴う政策であって、何のリスクもない正論ではない。しかし正論はリスクもない反面、何の効果ももたらしてはいない。
YCCの廃止によって日本経済は復活するという政策はリスクを伴うので万人受けするものではない。しかし、マネタリストのような金融緩和偏重で失われた時代を延長させたり、正論を言っているだけで、効果的な政策を何も打ちさせない者よりも、はるかに経済回復に貢献することになるだろう。
植田は慎重派なのでYCCを廃止するにしても時間をかけて説明をしながら進めると思うが、YCCの廃止は植田のような天才学者でしか進められない極限の政策になる。

最後までお読みいただきありがとうございます。デフレ脱却と自主独立に向けてみんなで協力していきましょう。
Tweet